【レンドルvsルコント、ノア】

どのような選手でも、レンドルに対抗するのは難しい。
しかし中には、意外な健闘を見せる選手もいる。
80年代を代表する2人のフランス人選手、ルコントノアはそれに当てはまる。


【レンドルvsルコント】

 

※データはATPより引用
Ivan Lendl (USA) vs. Henri Leconte (FRA)
1983-01-31 Philadelphia Indoor Carpet R16 Ivan Lendl (USA) 6-4 6-2
1983-04-04 Houston Clay QF Ivan Lendl (USA) 7-6 6-3
1983-05-02 Forest Hills Clay R16 Henri Leconte (FRA) 6-2 6-3
1983-10-10 Sydney Indoor Hardcourt QF Henri Leconte (FRA) 6-3 3-6 7-5
1984-04-16 Monte Carlo Clay R32 Ivan Lendl (USA) 6-4 6-0
1984-07-13 Davis Cup (WG-QF) FRA vs. TCH Indoor Carpet RR Henri Leconte (FRA) 6-3 8-6 6-4
1985-05-20 World Team Cup Clay RR Henri Leconte (FRA) 3-6 6-4 6-4
1985-06-24 Wimbledon Grass R16 Henri Leconte (FRA) 3-6 6-4 6-3 6-1
1985-10-14 Sydney Indoor Hardcourt F Ivan Lendl (USA) 6-4 6-4 7-6
1986-05-12 Rome Clay QF Ivan Lendl (USA) 6-4 6-2
1986-08-25 U.S. Open Hardcourt QF Ivan Lendl (USA) 7-6 6-1 1-6 6-1
1987-06-22 Wimbledon Grass QF Ivan Lendl (USA) 7-6 6-3 7-6
1987-11-09 Wembley Indoor Carpet SF Ivan Lendl (USA) 6-4 7-6
1989-09-25 Bordeaux Clay QF Ivan Lendl (USA) 6-2 6-3
Ivan Lendl (USA) leads 9:5
Hard: Ivan Lendl (USA) leads 2:1
Clay: Ivan Lendl (USA) leads 4:2
Grass: Tied 1:1
Carpet: Ivan Lendl (USA) leads 2:1

【絶大な人気を誇ったルコント】

レンドルの9勝5敗だが、
2人のキャリア比較から見ればルコントの大健闘と言えるだろう。

ルコントは完全に人気先行の選手だった。
当サイトの【収集データ】では、生涯勝率
ノミネートされている引退選手中、かなり低い位置にランクされている。
グランドスラムでは1988年に全仏で準優勝したのが最高成績。
この時は地元優勝の期待がかかったが、決勝でビランデルに敗れた。

しかし、インパクトの強い豪快なプレーは非常に魅力的だった。
サーブ、ストローク共に荒々しいがパワー充分だったし、ネットプレーも器用にこなした。
そしてクレーコートでもサーブアンドボレーのスタイルを崩さなかった。
クレーでセカンドサーブでも平気でサービスダッシュをかけた選手はそう居ない。
コート内でのパフォーマンスも含め、その辺も人々を惹きつけたのだろう。
クレーのみならず、グラスコートでも強かった。むしろスタイル的にはグラス向きだったといえる。
1985年のウィンブルドンではレンドルに勝利している。


【レンドルvsノア】

 

※データはATPより引用
Ivan Lendl (USA) vs. Yannick Noah (FRA)
1979-10-15 Basel Indoor Hardcourt QF Yannick Noah (FRA) 7-6 6-4
1981-02-02 Richmond Indoor Carpet F Yannick Noah (FRA) 6-1 3-1 ret
1981-10-05 Barcelona Clay SF Ivan Lendl (USA) 6-0 6-3
1982-02-15 La Quinta Hardcourt F Yannick Noah (FRA) 6-3 2-6 7-5
1982-04-05 Monte Carlo Clay SF Ivan Lendl (USA) 6-1 1-6 6-1
1982-07-09 Davis Cup (WG-QF) FRA vs. TCH Clay RR Yannick Noah (FRA) 6-2 3-6 7-9 6-3 6-4
1982-07-19 Washington Clay SF Ivan Lendl (USA) 6-3 6-3
1983-01-18 The Masters Indoor Carpet QF Ivan Lendl (USA) 6-4 7-5
1983-05-23 Roland Garros Clay QF Yannick Noah (FRA) 7-6 6-2 5-7 6-0
1984-01-23 Philadelphia Indoor Carpet SF Ivan Lendl (USA) 6-3 6-4
1985-08-26 U.S. Open Hardcourt QF Ivan Lendl (USA) 6-2 6-2 6-4
1986-05-05 Forest Hills Clay SF Yannick Noah (FRA) 6-3 7-5
1986-05-12 Rome Clay SF Ivan Lendl (USA) 1-6 6-2 7-6
1986-12-01 New York Indoor Carpet RR Ivan Lendl (USA) 6-4 6-4
1988-04-18 Monte Carlo Clay SF Ivan Lendl (USA) 4-6 7-6 6-3
1990-01-08 Sydney Hardcourt QF Yannick Noah (FRA) 6-1 6-4
1990-01-15 Australian Open Hardcourt SF Ivan Lendl (USA) 6-4 6-1 6-2
Ivan Lendl (USA) leads 10:7
Hard: Yannick Noah (FRA) leads 3:2
Clay: Ivan Lendl (USA) leads 5:3
Grass: Tied 0:0
Carpet: Ivan Lendl (USA) leads 3:1

【全仏初の地元選手優勝(オープン化後)】

レンドルの10勝7敗。ルコント以上の大健闘だ。

ノアは1983年に全仏で優勝した。地元選手としてはオープン化後、初の優勝となった。
全仏の成績だけでなく、キャリア全体としてもルコントより実績が上だった。
生涯獲得タイトル数は23で、ルコントの9を大きく上回っている。
全仏で優勝したときには準々決勝でレンドルに勝利している。

ルコント同様、クレーコートでもサーブアンドボレーのスタイルをとった。
ノア以降、全仏で優勝する選手は全員グランドストローカーである。
そのため、ノアが全仏で優勝した最後のサーブアンドボレーの選手となっている。
ルコントとの決定的な違いはストロークだった。
フラット系のルコントに比べ、ノアはクレーコート向きのトップスピンを使った。
そのため、適性のないグラスコートでは非常に弱かった。
ノアの最大の武器はネット際でのダイナミックなプレーだろう。
アクロバットと表現できるジャンピングスマッシュは観る者を魅了した。
サンプラスの豪快なスマッシュと並び、未だに世界最高のスマッシュだと言える。



【ちなみに他のプレイヤーとは】

 

他のトップ選手との対戦成績

ルコントの対戦成績ノアの対戦成績
コナーズ0勝6敗コナーズ2勝6敗
マッケンロー0勝10敗マッケンロー0勝4敗
ビランデル2勝11敗ビランデル5勝7敗
エドバーグ1勝6敗エドバーグ0勝6敗
ベッカー3勝10敗ベッカー2勝4敗

ほとんど相手になっていない。
唯一、ノアビランデルにのみ対抗できているといったところか。
こうしてみると、2人がレンドルには大善戦していたということがわかる。


両者ともマッケンローには打つ手なしだった。
1982年はフランステニス界が大いに盛り上がった年だ。
国別対抗戦デビスカップで、フランスがノアルコントを擁して決勝にまで進出したのだ。
決勝の開催地は地元フランスに決まった。それは自分たちが得意のコートを選べることを意味し、
当然クレーコートが選ばれた。相手はハードコート得意のアメリカ。フランス絶対優勢の状況だ。
しかし、アメリカにはジョン・マッケンローがいた。
結果、ノアはフルセットまで粘ったが敗北。ルコントはあっという間の完敗だった。


《フランスには面白い選手が多い》

ノアルコントとも多くの記録を残した選手ではないが、魅せる楽しませるテニスをしてくれた。
これは、観るほうとしては絶対に必要な要素である。
そしてこの系譜はその後も着実に受け継がれている。

 
フォアはスライスしか使わないサントーロ
粘りに粘るスタイルを貫くそのテニスはハードヒットが主流となった時代において非常に貴重な存在だった。
また、背が低いという、テニスでは決定的なハンデを背負っていながらも
ルコント顔負けの豪快なプレーを魅せたグロージャンは、私が最も好きな選手だった。
共に惜しくも引退してしまったが、21世紀初頭に「魅せる選手」として大いに楽しませてくれた。

   
その後の世代では、ガスケ、モンフィス、ツォンガなど豪快さを持ち合わせていながらも技巧を凝らしたプレーをする選手が登場している。
いずれも今ひとつランキング上位に定着しないという点ではフランス選手らしいといえるが、
いつ爆発するともわからないポテンシャルを秘めており、試合毎に見せ場を作ってくれる魅力的な選手たちだ。


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